伝統と進化

代々受け継いできた100年手織り機で、大相撲化粧まわしを織り続けて半世紀。今、「ランダム布」へと進化します。

伝統 大相撲化粧まわし

化粧まわしは、十両以上の関取が土俵入りの際に締める絹織物です。博多織や西陣織で織られています。長さは約7m、幅は約70cm。前垂れの部分に刺繍と房が施されています。生地を織る職人、刺繍や房を施す職人など、熟練の職人たちの分担作業で化粧まわしは作られています。

代々博多織の職を営む私の家が化粧まわしを織るようになったのは祖父の代からです。若乃花(初代・二子山元理事長)の 化粧まわしを昭和35年に15本織ったことが、きっかけです。

化粧まわしの経糸(たていと)は15000本で、裏が透けて見えないほど密度が高いです。その経糸を16本の糸を合わせた太い緯糸(よこいと)で強く打ち込み織り上げます。博多織の特徴である丈夫さやコシのある風合い、締めた時にキュッと鳴る「絹鳴り(きぬなり)」はここで生まれます。

化粧まわしの生地は無地の織物です。美しい無地を織るためには、糸繰(いとくり)から始まる、整経(せいけい)、糸継ぎなどの織り出すまでの準備を丁寧に行います。そして、織りの作業では、その日の湿度に合わせて経糸の張り具合を微調整し、常に一定のリズムで織り続けることにより、織りムラのない美しい織色の生地が生まれます。

先人の技術と心を大切に伝承 して行きます。(五代目)

進化 ランダム布

700余年続いた博多織の伝統の中で、伝承されてきた絹糸の素晴らしさを次の世代へ、つなぐため「ランダム布」を発明(特許取得)しました。

ランダム布は、経糸緯糸という織の規則性を無くし、糸をランダム(不規則)に重ねて制作した100%絹糸の不織布です。

ある晴れた日に、青い空にふわりと浮かぶ白い雲を見て「あの雲を首に巻けたら素敵だな」と考えたことがランダム布を開発するきっかけです。それから20年、試行錯誤を繰り返し、蚕が作り出した絹糸の美しさと優しさがある、あの日の雲のような柔らかな風合いの布が生まれました。

以前は身近であった着物文化が衰退する現代。
この絹糸の優しさを今を生きる人々の生活の中に残すため、ランダム布を新しい伝統として作り続けます。

大野浩邦 (四代目)profile
  • 2013年 九州国立博物館で行われた日本職人会グループ展に参加。
  • 2014年 ドイツ/フランクフルトの国際消費財見本市アンビエンテに参加。
  • 2015年 フランス/カステル・バジャック氏のアトリエを訪問。
  • 2017年 中国/上海の日本領事館にて展示会を行う。
  • 2018年 オランダ/EU・ジャパンフェストに参加。美術館にて作品展示。